更新日 2019年08月25日

価値観が多様化するこれからの時代でブライダルメディアに求められること

0303_価値観が多様化するこれからの時代でブライダルメディアに求められること

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

先日、ご縁があってIWAI OMOTESANDOを見学させていただく機会がありまして、会場のハードの要素もさることながら、そこ込められた意味やコンセプトもとても大切にされていて、とても衝撃を受けた時間でした。率直な感想としてはこういった価値観を持った人たちや会場がもっと世の中に広まるといいなと思ったのですが、逆に今の業界でこの会場の想いをどうやったらユーザーに広く深く伝えることができるのか?とも思ったんですよね。そこで、今回の記事ではこれからのブライダルメディアと結婚式場に求められることを、個人の視点でまとめてみました。雑記ブログです。

 

IWAI OMOTESANDOの見学

この記事を書くきっかけになった出来事ですが、先日ご縁があって表参道の「IWAI OMOTESANDO」を見学させていただきました。

▼エントランス

エントランス_IWAI OMOTESANDO
▼チャペル
チャペル_IWAI OMOTESANDO
▼バンケット①
バンケ1_IWAI OMOTESANDO
▼バンケット②
バンケ2_IWAI OMOTESANDO
▼ブライズ
ブライズ_IWAI OMOTESANDO
語彙力なくて申し訳ないですが、これまで見てきたどの会場とも違う、とても素敵な会場でした。ちなみに、個人的に一番驚いたのはブライズです(もう一部屋あるのですが写真撮り忘れました…、お風呂ついてた!)。

1つ1つの建築になぜこのような建築にしたのかのストーリーがあり、ゲストを含めたユーザーが結婚式を通じてどういった体験をしてもらえるか、そこに特化した造りになっています。これまで漠然と「自由な結婚式ができる会場」くらいにしか思っていなかったのですが、会場を案内していただく中でそういったコンセプトやお話も伺えて、何をしたい会場なのか、何ができる会場なのかがとてもクリアになりました。私の場合は法人ですが、もし将来何か自社イベントをするときはご相談させていただきます!

ただ、何より一番はすごいなと思ったのは「このハードの会場を出店する」この意思決定をしたことだと思います。こういったハードを見たりコンセプトを聞いて、すごい!とか、いいなぁうちの会場でもやりたい!と思うことは簡単ですが、新規のウエディングプロデュースを立ち上げるのとは違い、会場を造るには相応の投資が掛かります。なので、IWAIのようにこれまでとは違う全く新しい価値観の結婚式場を作る場合、投資回収できるのか…?意思決定前って超怖いと思うんですよね。なぜなら、新しい価値観がマーケットに受け入れられずに投資回収できないと恐ろしい金額を捨てるのと同じ意味になってしまうからです。

私にその判断は当然できないと思いますし、これまでいた会社を思い返してもその意思決定はしないだろうなぁ、と思います。もしかしたらホテル全盛の時代に初めてゲストハウスを造ったときもこういった判断から作られたのかなと思うと、今は「Guest centered celebration」というコンセプトのハードはIWAIしかなくても、この会場をきっかけにどんどん広がっていくのかもしれないなと思いました。

--☆--

で、帰り道にふと、「もし自分が集客担当者だった場合にどうやってあの会場を売るか」を考えてみたのですが(いちお本職はマーケティングなので)、これが難しいなぁってなったんですよね。

IWAI OMOTESANDOが刺さるユーザーは、会場のハードの要素ではなく「どんな結婚式をしたいか、もっというと結婚式を通じてどういう体験をしたいか」、これを真剣に考える人がある程度前提で、その上でそれぞれのカップルの思いとIWAIのコンセプトが合致した場合に売れるのだろうと思います。きっと、予算フックに強引に即決を迫るような営業スタイルも取っていないでしょうし。

ユーザー側で自分たちで想いをしっかりと考えられている「セルフコンセプトメイキング」のようなことまでできている人はほとんどいないでしょうから(就活時の自己分析みたいなイメージ)、どちらかと言えばそういった潜在的なニーズに対してIWAIのコンセプトの訴求を当てなければいかないことになるわけです。その方法が難しいなと。どうしたらいいのかな、そもそもこれって業界的な課題で1つの転換期なのでは?というのが、今回の記事のテーマです。

 

結婚式の選び方とメディア

今の一般的な結婚式の選び方

303_一般的な結婚式の選び方
  1. ブライダルメディア→結婚式場
  2. 自分で検索エンジンやSNSで情報収集→プロデュース

メインはこの2つのルートでしょう。1ルートが90%くらいかなとは思います。特徴はユーザーと結婚式場の間にはほぼ間違いなくメディアが入ることです。
人生における他の大きな買い物で考えてみると、

  • 車:トヨタとかマツダとか日産などの会社で選んだり、車種から選んだりする人もいるし、比較サイトなどで探す人もいある
  • 保険:ライフネット、オリックスなど会社で選んだり、保険の種類から選んだりする人もいるし、ほけんの窓口に行く人もいる
  • 結婚式:T&G、ベストブライダル、ノバレーゼといった会社から選ぶ人は少なく、まずはゼクシィ買って情報収集から始める

やはり結婚式だけ少し違いますよね。つまり、結婚式の初期認知はほぼメディアであるということが言えます。

ブライダルメディアはどのような情報を掲載しているのか?

多少の違いはあれど、どの媒体も会場ごとにだいたい以下の情報が掲載されています。

  • 会場の基本情報(アクセス、会場タイプ、料理などアイテムの内容、他)
  • フォトギャラリー
  • プラン・料金
  • ブライダルフェア
  • 口コミ

この情報をもとにユーザーは会場を選ぶことになるので、会場ごとの比較要素も当然上記の内容のいずれかで比較することになります。

  • 会場の基本情報→希望するエリアにあるか、ゲストハウスかホテルか、料理がフレンチか、提携ドレスブランドはどこか、など
  • フォトギャラリー→自分の気に入る雰囲気かどうか、広さやデザインのイメージ
  • プラン・料金→予算に合っているかどうか
  • ブライダルフェア→会場決定前に自分たちが確認したい内容をチェックできるのか
  • 口コミ→顧客満足度がどうか

逆に言うと、それ以外の内容(基準)でどの会場がいいかを選ぶのは非常に難しいと言えます。会場のコンセプトや結婚式を通じて得られる体験、結婚後の人生への価値観など、いわゆる「ソフトコンテンツ」の部分での会場ごとの違いが極めて分かりにくい、というかわからないと思います。

今の結婚式の選び方とブライダルメディアの構造からの問題点

もちろん、メディア内でソフトを訴求をしている会場もないことはないですが、どうしても表現が抽象的になってしまいがちですし(二人にとってかけがえのない時間を、オリジナルウェディングを、など)、明確な定義がないので誰でも言えてしまうという点が難しいところです。これは結婚式場だろうとプロデュースだろうと同じですね。

つまり、今のブライダルメディアに掲載されているコンテンツ以外のところに差別化要素を設定した瞬間に、その強みでユーザーを集客することが急激に難しくなる、これが課題だと思います。自社の公式ホームページやSNS以外に思いのたけを存分にユーザーに伝える場所がないからです。

303_今の結婚式の選びの課題

ユーザーの価値観の多様化

もう一つ、ユーザーの価値観が多様化してきていることにも触れておきましょう。

「#結婚式に自由を」から今の結婚式の不満を整理してみた

以前にこちらの記事でもまとめたように、これまで普通だった(普通だとみんな思っていた)結婚式に対して、不満や違和感を感じる人も増えてきています。その背景には、価値観そのものの変化に加え、スマホの普及とSNSの浸透に伴う情報へのアクセスの容易化と流通する情報量の爆発的な増加があります。

FacebookやInstagramで他の卒花やプレ花の投稿を見ることで、今の結婚式場やドレスショップではどんなことができるのかを簡単に知ることができますし、twitterでは不満や事故などもよく流れていますね(先日のメルパルクの炎上も発端はツイッターでしたし)。これまではほぼゼクシィか親、友人の体験談しかなかったのに、ユーザー側の情報収集方法がどんどん増えてきています。

だから、例えばこれまでであれば誰かが引出物の制度に疑問を持っても、主賓の挨拶長すぎる問題に嫌気がさしても、それを発信する場がなかったのですが、そういった声に容易にアクセスできるようになってきているのです。

車は持たない、酒も飲まない、家も持たない、などこれまでの社会一般の価値観から、消費者はどんどん変化してきています。ブライダルはその点ではまだ遅い方じゃないかなと思いますけど、それでもこういった流れは今後もどんどん大きくなっていくと思います。

 

これからのブライダルメディアに求められること

では、どうなっていくことが求められるのか?なのですが、

  • ユーザー:価値観が多様化する(そのニーズに合致するサービスがなければ結婚式しない人が増える)
  • メディア:??
  • 結婚式場:これまでとは違うソフトのポイントで差別化する(多様化するニーズに当てに行く)会場が増える

一言でまとめるとメディアは「多様な結婚式の選び方をユーザーに提供すること」となるんじゃないでしょうか。

メディアの動きとこれから

ここ数年のメディア側の動きを見るとブラックボックスをクリアにしよう、という流れはとても感じます。

  • どの媒体でもgood/badにかかわらず口コミが投稿・掲載されるようになった(特にゼクシィでも)
  • いわゆる掲載見積だけでなく、実際にかかる費用も掲載されるようになった(みんなのウェディング、ウエディングパーク)
  • 通常の挙式・披露宴以外のスタイルも掲載されるようになった(フォトレイト、1.5次会.com、など)

それ以外にも、オンライン予約の開始(エイチームブライズのヒマリ)など、様々な動きは出てきていると思います。

ただ、いずれも選択する基準自体は変わらない。会場と予算。これの会場別の比較ですね。あるとすればプラコレの「人(プランナー)」から選ぶ、という選択軸くらいではないかと。

なので、もっとコンセプトとか想いとか深い意味での体験とかから会場やプロデュースを選べるメディア、のようなものができてもいいんじゃないかなと思います(抽象的かつ語彙力の問題でうまく表現しきれず申し訳ないです)。会場から選ぶかコンセプトから選ぶか、既存メディア内でその両方を提示できるようになるか、後者のみに特化した選び方を提示するメディアが新たに登場するか。

ただ、もしそれをやろうとするときちんと会場やサービスごとソフト面の違いを的確にユーザーを伝えるためのサービス設計をしなければいけないので超絶大変、かつ現時点でユーザーニーズが明確に顕在化しているわけではないので金にならない(売上にならない)、という苦難しか見えないので、そこが難しいんでしょうけど。。

個人的な意見で恐縮ですが、今のメディアだとgensen weddingが一番こういったニーズの対応という点では近いんじゃないかと思います。会場を紹介する前に本質的なユーザーヒアリングを実施し、表面的な会場の希望条件マッチングだけではない紹介をしてくれるサービスだからです。冒頭のIWAI OMOTESANDOとの相性もいいんじゃないかと思います。今後どうやってサービスを展開していく予定なのかはわからないですが、もっと広がってくれるとこういった価値観を大切にする会場がもっと生きる業界になっていくんじゃないでしょうか。

結婚式場のこれから

最後に、逆に結婚式場側の立場でどんなことを考えることが必要になるかについても少し。

まず、集客において媒体での勝負を最適化するだけではなく、ユーザーからダイレクトに指名されるような会場になるための仕掛けをどんどんしていくことが必要になります。最近の事例だとTRUNKとかすごいなと思いますが、結婚式場を探そうと思ったときに一次想起されるような会場になることですね。

もう一つは、そもそもユーザーに提供できる付加価値を磨くことが必要になるという点です。今後はハードの要素だけの競争ではなくなっていきますので、自社のサービスを提供したときにユーザーはどういう体験ができるのか、その価値とは何なのかを会社やブランドとしてきっちり作っていくことが求められます。チャペルのバージンロードが何mなのか、バンケに階段がついているか、という話ではなくなるのです。

 

まとめ

これまでいろいろな情報と触れてきた中で個人として思っていたことを、この機会にまとめてみました。結婚式場もメディアも、実業を何もやっていない立場だから書けてしまうというのは自分でも理解していますが(どちらの立場であっても、これを実行しようしたらすさまじいパワーが必要です、自分でやらないって決めているから書けてしまう)、プレスリリースの考察ばかりではなく、またたまにはこういった記事も書いていこうと思います。

最後に、こういった機会をいただいたIWAI OMOTESANDOとCRAZYの皆様、ありがとうございました!

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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