結婚式場は日本におよそ4,000会場あるといわれていますが、最近では株式会社Brilliaの倒産が大きなニュースとなったように、実は多くの会場が経営困難に陥り倒産しています。その理由として、人口減少・結婚組数の減少・なし婚率の増加・競合会場の新設など、外的なマーケット環境がどんどん厳しくなってきていることが挙げられますが、それと同じくらいかそれ以上に開業前の投資回収計画が(とても)甘く作られていることも大きな理由だと私は思います。今回の記事では、結婚式場の新規出店時を検討する際にどういったデータをもとにどういう考え方で見通しを立てるべきなのか、を書いていきます。一般的な「投資回収計画とは」のような内容はこのブログ以外に多くの書籍やブログなどで書かれているので、どちらかといえば「結婚式場の開業」にフォーカスして書いていきます。これから新規出店を検討されている方にとって参考になれば幸いです。
結婚式場を新設する場合、開業前の投資額が非常に大きく、その投資額を数年または10数年かけて回収していくというビジネスモデルになります。そのため、投資回収計画が甘かったせいで開業後に全く利益が出ないことがわかったとしても途中で運営をやめることできず、投資額をまったく回収できずに終わってしまいます。ブライダル業界は「売上が出るかなり前の段階で、会場建設という極めて大きな投資をする」という点で非常にリスクの高いビジネスと言え、甘い投資計画で意思決定することは絶対に避けなければならないことなのです。
とはいえ、投資回収計画が甘いと言われても何がどうなっていると甘いのか、甘くならないためにはどのように考えて計画を作成すればよいのかという点が肝なので、 投資回収計画のつくり方を書いていきます。
新規出店を決めるまでのフローとは?
新規出店をする、と決めるフローは会社によって異なると思います。基本は出店希望エリアと売りに出されている物件・土地の情報を取得することがスタートになりますが、年間何店舗を出店するかをあらかじめ中期計画に組み込んでいてその計画に沿ってよいと思われる物件をリスト上位から決めていくパターンと、そうではなく物件のリサーチは常に行っておりその中から投資基準をクリアしたときに初めて出店すると決めるパターンの2つがあります。これは会社の経営方針によるのでどちらが正解といった類のものではありませが、どちらであったとしても精緻な計画を立てることが重要である、ということは変わりません。
新規出店を検討する際には、以下の手順を踏むことが重要だと考えています。
- 基本となる年次のPLを作る
- 投資回収計画に落とし込む
- 出店可否の判断基準のコンセンサスを取り、意思決定をする
この中でも特に1をどこまで精緻に作れるか、が肝です。
今回の記事では「もしも東京の表参道に新しい物件があって、2018年4月予定で3バンケットの新規出店を計画するなら?」という設定で、この順番に沿ってそれぞれ書いていきます。
基本となる年次のPLを作る
年次PLのポイントは売上~営業利益までの数値に紐づくKPIを精緻に正確に設定し、そのKPIをできるだけ精度高く予測することです。
- 売上
- 原価
- 販売管理費(人件費、広告宣伝費、地代家賃・減価償却)
1.売上
まずはじめは売上の予測についてです。この場所のこのスペックに結婚式場を新たに建設したら、一体いくらの売上を獲得できるのか。という最も重要な部分になります。
売上を予測するための基本ロジック
- 売上 = 施行組数 × 組単価
- 施行組数 = 来館数 × 成約率(&リードタイム)
- 来館数 = 反響 × 来館率
- 反響 = マーケットサイズ × 推定獲得シェア
- 推定獲得シェア = (1/同エリア内の結婚式場数) × 広告出稿量に関わる係数 × 会場の強みに関わる係数
上の図のように売上を構成する要素を分解していくと、マーケットサイズ、同エリア内の結婚式場数 、広告出稿量に関わる係数、ハードの強さに関わる係数、来館率、成約率、組単価、この7つのKPIによって成り立っていると言えます。
「来館数」を予測する
マーケットサイズ
マーケットサイズとはユーザーがどれくらいそのマーケットにいるのか、の数値で、出店する住所の「ゼクシィネット上での区分」を対象エリアとし、この対象エリアの月間の総来館数をマーケットサイズと考えます。今回のケースであれば対象エリアは「青山・表参道・渋谷」になります。※下のキャプチャの真ん中のところ。
青山・表参道・渋谷エリアの月別の総来館数が何組いるのか、というデータはリクルートの営業担当からもらうことができます。また、本当は他エリアからの流入や逆に他エリアへの流出も起こりうるのですが、正直なところこれ以上に正確なデータがないのでこちらを正として問題ないです。なお今回のケースでは、そのデータが以下のような数値だったとして話を進めていきます。
※↑こんな感じのデータをもらえます。ちなみに数字はテキトーにいれていますので実際の数値とは異なります。
上の図は、過去の来館数です。今回のケースでの出店予定は2018年ですからこのデータをもとに2018年以降のエリア内の来館数はどうなるだろうか、という予測を立てなければなりませが、以下のような計算式で予測を立てることができます。
次年度来館数予測数値 = 前年来館数実績 × 年次トレンド
年次トレンドとは1年後との年間の総来館数がどのような割合になっていくか、で計算します。例えば2012年から2013年だと、
- 2012年1月~12月の年間来館数合計:39,400
- 2013年1月~12月の年間来館数合計:38,218
となるので、年次トレンドは38,218/39,400=97%、となります。ブライダルのエリアの来館数は、巨大な新店が出店したり(逆に閉店したり)など、よほど大きな出来事がない限りトレンド自体はそんなに変わりません(※ちなみに2011年の3月と4月だけは震災後の自粛ムードの影響を受けて、全国的に極端に来館数が減っているので、参考データからははずしたほうがいいと思います)。なので、過去5年くらいのデータを元に年度別のトレンドを算出し、次にその平均値を算出することで出店以降の年度のエリア総来館数を予測します。
今回のケースであれば年次トレンドの平均は97%だったので、2018年以降も年毎に総来館数が97%ごとになっていくだろうと予測し、計算すると以下のようになります。
これでマーケットサイズの予測とします。このマーケットサイズに自社会場のシェアを掛けると自社会場の来館数、となるので、次にどれくらいのシェアを取れるのかを考えます。
シェアの要素①:同エリア内の会場数
記事執筆時(2017年5月)のゼクシィネットを見たところ、青山・表参道・渋谷エリアの中には57会場ありました(先ほどの写真の通り)。例えば上表の2019年4月のエリア内の来館数予測は2747組で、その数を57会場で獲得するとなると、1会場あたりの来館数は
2747 ÷ 57 = 48
という計算式で、48組となります。これがもし仮に80会場あるエリアであったり、30会場しかないエリアであれば、それぞれ
2747 ÷ 80 = 34
2747 ÷ 30 = 91
となり、想定で獲得できる来館数が大きく異なります。出店するエリア内に結婚式場がいくつあるのか、は必ず確認しておきましょう。とはいえ、エリア内の来館数が均等に57等分されることなどまずありません。平均値をとれば前述の48組になりますが実際はかなりバラつきが出ます。そのバラつきが生まれる理由が「広告の出稿量」と「会場の強み」です。
シェアの要素②:広告の出稿量
まず広告の出稿量ですが、雑誌の広告であってもネットの広告でもいかに認知されるためには掲載順位を上げることが重要です。雑誌であれば前に載る、ネットであれば上に載る。当たり前のことですが前に掲載されればされるほど目に留まる確率が上がり、最終的には来館数につながります。エリア内の会場数ごとに掲載順位と獲得できるシェアの関係性を表したものが下グラフです(数値はイメージです)
この掲載順位に関するロジック(アルゴリズム?)は媒体ごとに異なりますが、ゼクシィの場合は「出稿しているページ数が多い順番」に上から並びます(一部徹底ページでの出稿などは雑誌の場合は前に出たりしますので、詳しくはこちらの記事「ゼクシィからの集客を徹底攻略!【結婚式場の集客担当者向け】」をご覧ください)。青山・表参道・渋谷エリアの場合は57会場なので、だいたい上グラフの真ん中のオレンジのラインのような想定来館数になります。次に1位になるためにどれくらいの出稿量(=広告宣伝費)が必要になるかも検討します。
ゼクシィでの掲載順位を予測するためには「台割」というものが必要です。これをお読みになっている時点ですでにこの仕事をされている方であれば見たことあると思いますが、台割とは会場別の出稿ページ数を月ごとに一覧化したものです(これもリクルートに依頼すればもらえます)。この台割を見れば、何ページ出せばだいたい何位くらいに掲載されるのかがわかります。これはあくまで予測ですが、青山・表参道・渋谷エリアで1位を取ろうとすれば月によっては14ページくらいが必要でしょう。一方、地方では4ページや6ページの出稿でも1位になることもあります。
今回のケースで月の来館数が平均で100組必要だったすると、必要なシェアは約3.8%になり、この3.8%のシェアを獲得するためには掲載順位が8位前後であることが必要で、さらに青山・表参道・渋谷エリアで8位前後の掲載順位を維持するためには平均で8ページくらいの出稿量が必要となる、というシミュレートを出すことができます。
シェアの要素③:会場の強み
ここまでで、青山・表参道・渋谷エリアに新規出店した場合に、どれくらいの量の広告を出稿すればどれくらいの来館数が獲得で競うかの理論値は出すことができました。最後は「会場の強み」という要素をどのように考えるか、というポイントです。「会場の強み」とは、ユーザーが他の結婚式場と自社の新規店舗を比較したときにどれくらい選んでくれそうか、という数値で、シミュレートの中でも予測が最も難しく、かつオープン後もぶれやすいところです(自分もあまり自信を持っている部分ではないですが・・・)。
一般的にユーザーが結婚式場を選ぶときの基準のうち、ハードの要素として以下のような点が挙げられます。
- チャペル:様式、バージンロードの長さ、天井高、自然光、など
- バンケット:収容人数、デザイン、ガーデンの有無、プールの有無、階段の有無、など
- ロビー:広さ、デザイン、他のお客さんとバッティングしないかどうか、など
- 外観:緑の有無、デザイン、など
- 立地:駅からの距離、利用駅の利明度、など
※これらの各ポイントにおいて競合会場とどのように差別化を図っていくか、どのように強みをつくっていくか、がデザインとゾーニングの腕の見せ所であり、強いハードを作れる物件を探してくることが店舗系部署の腕の見せ所と言えます。
会社としてのデザイン力とゾーニング力を駆使したときに、競合会場と比較してそん色ないものを作れそうなら係数1、物件の条件的にやや厳しそうなら0.8(例えばチャペルの天井高が低い、バンケットの収容人数が80名になりそう、など)、とてもすごい会場作れそうなら1.2(表現が雑ですみません)、と言った具合に過去の出店実績などからある程度の係数を定めます。
今回のケースでは、やや駅から遠い物件だがいいハードは作れそう、と予測し、係数を0.9として定めたとします。
まとめ:シェアを予測する
ここまでの①~③まででシミュレートしてきた各要素の数値を元に、シェアを予測します。
- 要素①会場数:青山・表参道・渋谷エリアの会場数は57会場あり、
- 要素②広告出稿量:その中で平均すると毎月8ページくらいの出稿をするので3.8%程度のシェアが取れそうだが、
- 要素③会場の強み:競合比較して遜色のないハードが作れそうではあるものの、駅からやや遠いので係数0.9倍くらいのシェアになりそう
ということで、この物件と広告出稿条件であれば、3.8%の0.9倍なので3.4%程度のシェアになりそう、と予測できました。
これらの数字から来館数の予測数値をまとめます。
青山・表参道・渋谷エリアの1ヶ月あたりの平均来館数は2018年度2735組で、それ以降年度ごとに3%程度ずつ減少見込みなので左から2番目の列の数値、広告出稿~シェアは前述した通りで、これを掛け合わせると一番右の列の来館数になるとシミュレートできます。年々減っていって悲しいですが、どこのエリアもだいたいこれくらいのシミュレートになると思います。この来館数のシミュレートで売上は大丈夫なのかどうかについては、PL全体の数値を見てから判断しますので、ここまでシミュレートできた、また広告出稿量の条件を変更したときにどのように変化するかの基本的な考え方はまとめられましたと思って先に進みます。
ここまでが来館数値の予測の仕方です。長くてすみません。続いて成約率のシミュレートです。
「成約率」を予測する
すでに自社会場を運営している会社の場合は、自社の平均成約率をそのままスライドで基本的に問題ないと思います。考慮が必要なケースとしては
- 価格をこれまでの会場と極端に変える
- オペレーションの都合上、挙式・披露宴の時間帯が極端に早い(9時台)、または遅い(19時台)
- これまで1バンケットの会場しか運営していなかった会社が複数バンケットの会場をオープンする(もしくはその逆)
- プランナーを新人だけアサインする、またはエース級だけアサインする(ほとんどないと思いますが)
などが挙げられます。
1の価格については、価格を下げるからと言って成約率が上がるとは限りませんが、価格を上げる場合は成約率は下がりやすいです。プランナーがその価格帯の接客に慣れていないことが理由です。
2の時間帯については、10時以降から17時くらいまでの開始であればそんなに影響することはないと思いますが、それより早い枠、遅い枠がある場合はユーザーは避ける傾向にあるので、その時間帯の施行枠を設けなければならない場合は下がるように設定したほうがいいと思います。
3のバンケット数については、一般的には複数バンケットがあるほうが成約率は高くなりやすいです。なぜなら1バンケットの場合は、どんなにチャペルが気に入ってもそのバンケットを気に入らなかったら終わりですが、複数ある場合はバンケットのどれかが気に入れば成約になる可能性が高いからです。また、挙式の時間帯を複数用意できることも成約率が高くなる要素として挙げられます。
4については、もし社運をかけた肝いりの新店でエースだけ投入する、などあれば多少は高く見積もってもいいと思いますが、実際はそんなことあまりないでしょう。
今回のケースでは、特に大幅な変化点はないとして、成約率を40%で設定することにします。
「組単価」を予測する
これも成約率同様、自社の平均組単価をそのままスライドで基本的に問題ないと思います(ただしできるだけ同エリアの会場の組単価を用いること)。マーケットの平均単価を参考にするというのも方法の一つですが、マーケットよりも自社の他店舗データの方が、商品構成なども含めて実態に近いので、そちらをオススメします。考慮が必要なケースとしては、
- 商品構成を変える、価格を変える
- まったく新しいエリアへの出店でエリア平均単価がこれまで出店してきたエリアを大幅に差がある
が挙げられます。
1の商品構成を変える場合は、そもそもの見積りに入れ込む金額が変わるので、これまで出店してきた店舗の商品価格との差分を考慮に入れる必要があります。あまりないケースだと思いますが、出店の条件としてどこかのパートナーとの取引が必須であるなどの条件がついている場合はこれに当てはまります。
2のエリアが違う場合は、仮に商品構成と価格が同じであっても大きく値引きをしないと成約できない、などのケースが起こりやすいので考慮したほうがいいでしょう。東京や大阪など大都市圏で展開していた企業が地方に進出する際に起こりやすいです。
今回のケースでは、特に大幅な変化点はないとして、平均組単価380万円で設定することにします。
これまでの数値から売上を予測する
2018年度で売上がいくらになるのかを予測してみましょう。
こちらはエクセルで作った表ですが、各KPIをB列に、年間合計をC列に、月別の数値をD列~O列に記載しており、各行ごとのつながりはこれまで述べてきたとおりの数式で組んでいます。※本当はエクセルファイルをダウンロードできるようにしたいのですがやり方がわからないのでキャプチャですみません。
このように、一つ一つ集めてきたデータをもとに、それを組み合わせることで売上の予測を立てることができます。C14セルの16億3,400万円、が2018年度の予測売上になります。
2.原価
原価は販売価格に原価率を掛けて計算するので、原価率をどのように設定するか、がポイントです。原価率は細かく設定なら販売商品ごとに分けて考えますが、ある程度の粒度のカテゴリごとで設定してしまっても問題ないと思います(料理の原価率、飲料の原価率、衣装の原価率・・・など)。
今回のケースでは以下の商品カテゴリごとに、すでに運営している他店舗での原価率の数値をベースに変更あるところだけ変更することにします。
- 料理:20%
- 飲料:15%
- 会場費:0%(販売管理費の地代家賃、減価償却に含みます)
- 挙式:40%
- 装花:50%
- 衣装:70%
- 美容:70%
- 写真:50%
- 映像:50%
- 引出物:50%
- 司会:50%
- 音響:50%
- ペーパーアイテム:50%
これを先ほどの表に加えると以下のようになります。
商品カテゴリごとに原価率を設定した数値をC列に記載していて、D列以降は「カテゴリごとの平均単価×原価率×月ごとの組数」の掛け算で計算しています。数値は適当に入れていますが、考え方としてはこのように設定していくと粗利・粗利率のシミュレートを算出することができます。
3.販売管理費(人件費、広告宣伝費、地代家賃・減価償却、他)
結婚式場の運営でかかる販売管理費のほとんどは人件費、広告宣伝費、地代家賃・減価償却、の3つです。
人件費
店舗を運営するのに必要な人員数×人件費単価、で算出します。パートナーに外注しているのか内製で人員を抱えているのか、によってどこまでの人員を含めるかは異なりますが、やはりすでに運営している店舗の実績を参考にしながら算出するのがよいと思います。必要人員数は年間の施行組数・来館者数と相関があるので、その数値を元に算出とよいでしょう。
今回は以下の条件で設定することにします。
- 支配人(1人):年収600万円×1=600万円
- マネージャ(2人):年収500万円×2=1,000万円
- プランナー(10人):年収400万円×10=4,000万円
- 事務(1人):年収300万円×1=300万円
- その他(サービス、キッチン、などのアルバイト含めて)合計:9,000万
- 合計:14,900万円
広告宣伝費
媒体ごとの想定出稿量×出稿単価、で計算し、それを合計すると言うのが精度は高いとは思いますが、不確定要素が大きいこととそこまで計算するととても工数がかかるので、私のオススメとしては、
ゼクシィにかかる広告宣伝費 ÷ 広告宣伝費に閉めるゼクシィの割合 = 総広告費
と計算するのが少ない工数でそれなりの精度の数値を出せるものと考えます。
今回のケースであれば月平均8ページの出稿が必要、とすでにシミュレートされています。仮に1ページあたりの単価が80万円だとすれば
80万円 × 8ページ = 640万円
これだけの金額がゼクシィの雑誌の出稿に対してかかります。これにゼクシィネットの掲載費(毎月40万円)とゼクシィなび総客での手数料(毎月60万円)を足すと、ゼクシィ全体で毎月740万円かかることになります。
さらに、すでに運営している他店舗の実績で、総広告費におけるゼクシィの占める割合が50%だとすると
740万円 ÷ 50% = 1,480万円
となり、開業後に売上のところでシミュレートした来館数を獲得するためには毎月1,480万円程度の広告費が必要になる、と算出できます(もちろん月による変動はありますが平均するとこれくらいになるだろう、という数値です)。
地代家賃・減価償却費
地代家賃は物件の条件によります。少しでも安くできるよう交渉を重ねます。
減価償却費は定率法か定額法か会社の方針によりますが、投資額によって決まります。投資額は広義での内装デザインをどこまでこだわるかによって変わってはきますが、実際のデザインを検討するときは先にバジェットの上限額を決めてその中でいかにデザインを洗練させるか、という順番で進めたほうがうまくいきます。作りたいものを作ってできるだけ予算は抑える、という意識で進めるとなかなか予算は収まりません。
今回のケースでは以下のような条件とします。
地代家賃:1,500万円/月
減価償却費:総投資額15億円の10年償却、定額法
その他
水道光熱費やITシステム費、旅費交通費や交際費、などその他の金額は他店舗の年間施行件数が近い店舗を参考に概算で入れておきましょう。
管理部門などの本部機能にかかる費用の配賦
本部機能を有している会社であれば、その機能はコストセンターになるので維持するのにかかる費用(人件費、本社の家賃、など)がかかります。その費用はプロフィットセンターのどこかで吸収しなければならないので、その分を組み込まなければなりません。
今回のケースでは年2,000万とします。
販売管理費までまとめると以下のようになります。
2018年度は営業利益が2.1億円、営業利益率が13%というシミュレートになりました。優秀ですね(笑)
前編まとめ
ここまでで単年度PLの作り方を書きました。ポイントは
- 集められるデータからできるだけ精緻に売上の予測を立てる
- 特に来館数が大きく影響を及ぼすので雑に予測しない
- わからない数値を強気に読みすぎず、他の店舗運営の数値をベースに保守的に設定する
です。さらっと書こうと思っていたら9,000文字を超えてしまいました。ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回の予定
次の記事では以下の内容を後編として書く予定です(1週間くらいかかるかも・・・)。
投資回収計画を作る方法
- 年次PLを10年分作る
- 投資額と回収のバランスを見る
- 変動要因があるとすれば何が起こったらどうなるのかを洗い出す
意思決定の判断基準の目線のそろえ方
出店するかどうかの基準を決め、関係者でコンセンサスをとっておくことが重要です。
- 売上がいくら以上なら出店?
- 営業利益額がいくら以上なら出店?
- 営業利益率が10%以上なら出店?
- 投資回収期間が5年以内なら出店?
おわり