アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。
打合せウェディングプランナーの公平な評価が難しいと感じている経営者や人事担当者は意外と多いのではないでしょうか。
新規ウェディングプランナーのように成約数や成約率などの営業成績が分かりやすいわけではなく、営業の要素もあるもののすでに成約済みの状態がスタートなので、契約時の見積り条件によって単価や売上も幅があり一概に評価するわけにもいきません。
今回の記事では、打合せプランナーの評価で使える「売上予測達成率」という指標について書いてみたいと思います。業界的にはあまり一般的ではないかもしれませんが、結婚式場の業績予測でも使える指標なので、発想の1つとして参考になればと思います。
目次
打合せプランナーの仕事とは?
お客様の対応を分業制で行っている結婚式場では、新規接客を専門で行うウェディングプランナーと、成約を頂いたお客様の当日までの打合せ業務を行うウェディングプランナーがいて、この記事では後者のことを打合せプランナーと書いています。 打合せプランナーの主な業務は、ご成約頂いたお客様に対して打合せを行い、ドレスやヘアメイク、装花、料理、写真、引出物、演出や音響などの提案、結婚式全般のプランニングを担当する役割を担います。
新規プランナーが営業という役割が強いのに対し、打合せプランナーはどちらかというと結婚式というプロジェクトをまとめていくプロジェクトマネージャのような役割期待が大きいですね。
打合せプランナーのよくある評価基準
分業制の結婚式場でよく用いられている評価指標とその課題点をざっと洗い出してみましょう。
- 売上
最も公平性の高い目標だと思いますが、担当アサインの方針と個人ごとの売上目標の設定基準に整合性があるかどうかが重要になります。 - 担当組数
担当アサイン方針が明確でないと、アサイン権を持つ人の采配次第で不公平感が生まれる可能性があります。また、新規の成績が振るわず成約数が少ないと軒並み厳しい状態に陥ります。組数ショート分は単価で頑張りようがないので。 - 組単価
成約時の値引き額や申込人数によって単価の上下が大きいので、アサインのバランスを考慮しないと少人数担当ばかりを持ったプランナーが厳しくなりますし、予算少なめのお客様の担当を持ちたがらなくなります。 - 申込時からアップした人数
一見公平にも思えるのですが、会場のキャパぎりぎりの申込人数のお客様はそもそも人数アップ不可能だったり、家族のみと決めてる人は増える見込みがないので、担当の選り好みが起こりやすくなります。 - 利益
利益率高い商品を優先的に売ることを意図した評価指標ですが、結局FBを優先的に案内しましょうとなるので売上目標とさほど変わらない割に計測が複雑でわかりにくく、手間がかかります。 - 顧客満足度
打合せプランナーのやりがいともリンクしていてよさそうな指標ですが、計測が非常に難しいのがネックだと思います、満足度をどのように図るのか。施行後アンケートだと回収率が課題になりますし、打合せはいまいちだったが値引きが多かったから90点!となると打合せプランナーの影響度合いがよくわからないですよね。また、成約時点でクレームがわかっている場合は評価が下がるので担当持ちたくない、ということも起こりやすいです。
特定の1つの指標で評価するというよりは、いくつかの指標にウェイトをかけてそれを案分した形で評価しているところが多いのではないかと思います。
このように様々な指標があり、どれをとっても一定不公平感が出しまうのが新規プランナーと違って難しいところです。極論を言ってしまうと全員が納得できる評価指標などこの世にないのですが、できるだけメンバーが納得できる指標を考えることは必要ですよね。
打合せプランナーの評価指標に業績予測ロジックを活用してみよう
この記事では、独自の評価指標を「売上予測達成率」と表現します。
売上予測達成率とは「申し込み時点の条件から着地金額を予測し、その予測金額に対する達成率」のことです。
もともとは新規契約時の条件から正確な売上予測を立てるために考えられたロジックで、その予測ロジックで算出される金額を基準として達成率を測るものです。
この指標は「営利企業である以上打合せプランナーも売上責任を負う必要はあるものの、新規プランナーと比べて契約時の前提条件が結果に影響を与える要素が大きく、これを踏まえた上で公平に指標は作れないものか。もしそれが作れればもっとマネジメントにも活きるのに」と悩んでいたことがきっかけで考え出したものです。
もちろん、打合せプランナーの評価が数値のみでされることが良いとは思わないですが、納得できる数値指標としての活用は可能だと思います。
では、この売上予測達成率という指標は、どんな考え方に基づいてどのようなロジックで計算されるものなのかについて説明していきます。
①売上予測達成率とはどんな考え方に基づいているか
売上の構成要素を分解するとこのようになります。
- 売上=組数×組単価(=SUM(担当施行の組単価))
- 組数=来館数×成約率:新規の営業実績によって決まる
- 組単価=値引き前単価-値引き
- 値引き前単価=SUM(料理,飲料,会場,挙式…)
- 料理単価=SUM(コース料理,デザブ…)
- 飲料単価=SUM(フリードリンク,乾杯酒…)
- 値引き=成約時に決まります
- 値引き前単価=SUM(料理,飲料,会場,挙式…)
申し込んだ時点で値引額はほぼ決まっていますから、料理や飲料のカテゴリごとの着地単価を予測できれば申し込み時点の条件から最終的な組単価の予測が可能になります。
②どのようなロジックで売上予測を計算するのか
基本的にアイテムカテゴリ単位で考えていきます。
例えば料理単価はコース料理やお子様料理、デザートビュッフェなどさらに細かくアイテムごと分解することができますので、アイテムごとの打合せ後の着地単価予測を出せればカテゴリごとも予測することができます。
例えばコース料理13,000円で申し込まれた場合の着地平均が16,500円だったとすると、その金額までは単価アップすると予測できますよね。同様に他カテゴリのアイテムについても同様です。
1組ごとの売上予測=(料理の売上予測+飲料の売上予測+会場の売上予測+…+司会の売上予測)-申し込み時点の値引き額
こんな感じの計算式になります。ちなみに注意点を上げておくと以下の通りです。
- 細かくロジックを設定しすぎない
- 計算元になるサンプルデータ数を担保する
- サンプルデータは必ず統一された商品構成になっていること
- カテゴリごとの単価が相互に依存しないという考えに基づいくこと
③売上予測達成率はどうやってオペレーションに組み込むのか
- 売上予測を計算するフォーマットはエクセルでも作れます。まずは簡単なもので大丈夫なので、売上予測ロジックを数式で打ち込んでみましょう。
- 次に、担当が決まったら申込時の条件をエクセルのフォーマットに打ち込んで売上予測を計算します。これがこの担当の目標金額になります。
- それを目標を達成するための打合せのシナリオを組み、実行します。
簡略化して書きましたが、実際は複数組の担当を同時に持つのでこれらの一連の流れを同時に行っていく流れになります。この評価指標を用いると、一律ではなく一組ごとに最適化された目標売上とそれを達成するためのシナリオをしっかりと組むことができるので、振り返りの内容が非常に濃くなり、仕事の生産性が上がることが期待できます。
打合せプランナーの評価基準(案)
- 売上:40%
- 売上予測達成率:20%
- 生産性:20%
- 顧客満足度:20%
この4つの指標をこのようなウェイトで評価基準に組み込むのがよいかなと考えています。
この記事では売上予測達成率についてしか深くは触れていないですが、評価しても原資がないと会社としては何もできないので売上の絶対額目標は一番ウェイトを高くすることが必要だとは思います。
ただ、それだけで定量評価をしてしまうと、営業の成果が足りないと共倒れしたり少人数や値引多い成約が多いと単価が厳しいなど、純粋な打合せの単価アップ力以外のところで評価が決まってしまう可能性が高いので売上予測達成率も加えています。
また、生産性は高いほうがいいですし(単に早くて雑なのはダメですよ)、顧客満足度も重要だと思っているので加えています。
具体的な基準値や測定方法は会社によってばらばらだとは思いますが、もし私が人事で評価基準を作る担当になったらきっとこうすると思います。
打合せプランナーの評価基準についての考え方まとめ
予算策定や業績予測で使うロジックを少し応用して評価基準に使ってみようという話でした。
申し込み時点の人数と平均値引から1組ごとの売上予測を算出する、という発想はブライダル業界ではあまりメジャーではない気がしますが、未来を予測しながら足元の営業戦術の最適化を図ることができるので、この機会に少しでも検討してもらえると嬉しいです。