更新日 2021年09月15日

これからの時代の結婚式場のマーケティング戦略とは?

0066_これからの結婚式場のマーケティング戦略

アナロジーの市川(@analogy_ichitk)です。

少子化に伴う結婚適齢期の人口減少、価値観の多様化や格差社会の拡大にともなう生涯未婚率の増加、結婚式実施率の低下など、結婚式を挙げるカップルの絶対数は年々減ってきています。

また集客チャネルは多様化するなど、ブライダル業界のマーケット環境はすさまじいスピードで変化し、厳しさが増してきています。

今回の記事ではマクロで起こっている環境変化とそれを踏まえてこれからのマーケティングで必要な戦略についてをまとめます。

66_この記事で書いていること

 

1.市場環境、マーケットはこれからどうなっていくのか

市場規模の推移と予測については次の記事をご覧ください。

ブライダル業界の市場規模はどれくらい?関連市場も含めた算出結果まとめ

44_ブライダル業界の市場構造

ブライダル関連事情はこのように定義することができ、それぞれの市場規模の予測は以下の通りです。

44_ブライダル関連市場の市場規模まとめ

ただし、婚姻組数の減少や披露宴実施率の低下、サービスの多様化などの背景から今後も市場縮小の傾向は続くと考えられており、また2020年~2021年現在は新型コロナウイルス感染症の影響で例年期の60%減少という状態となっている。

 

2.顧客はどのように変化していくか?

婚姻組数の推移

66_婚姻組数予測

出典:リクルートブライダル総研作成 婚姻組数予測

こちらのデータを見てもわかるように、今後緩やかに婚姻組数は減っていくことが予想されます。つまり仮に挙式・披露宴実施率が横ばいで推移したとしても結婚式を実施するユーザー数は減っていくとになります。

さらに、挙式・披露宴実施率も年々下がってきていますので、婚姻組数の減少と掛け合わせて年3%前後くらいのペースで減っていくことが予想されます。

顧客の年収と結婚式費用の関係

66_結婚式の平均単価と結婚平均年齢時の年収&手取り_2

結婚式に関わらず、購買行動の意思決定には支払うお金と得られる価値のバランスをどのように感じているかという点が非常に重要であり、ブライダル業界で言えば、1回の結婚式に支払う約350万円の費用に対して、その価値を感じられるかどうかがポイント、ということです。

今後結婚式の平均単価がどのように変化していくかはわからないですが、もし350万円程度から変わらないとすると、年収の約8割とほぼ同額なのでかなりインパクトのある金額であるという状況は続くでしょう。

 

3.ブライダル媒体の変化

ブライダル媒体各種の集客のポイントは以下の記事にまとめてありますのでご覧ください。

オンラインカウンターができる、媒体特別のプランができるなどのマイクロアップデートはあるでしょうが、結婚式場から広告宣伝費を支払ってもらってメディアを運営し、式場の来館予約を提供するというビジネスモデルは今後も変わらないと思います。

66_ブライダル媒体のモデル

また、媒体から集客改善については資料の無料ダウンロードもできますので、ぜひご覧ください。

初めてのブライダル媒体運用 入門ガイド

 

4.集客手法の変化

コミュニケーションチャネルはここ20年ほどで爆発的に増えましたし、今後もその傾向は一定続くでしょう。ウェブ広告を駆使して集客するというのはもはやなくてはならない手段となったと言っていいと思います。

さらに、ここ10年ほどでSNSも生活に欠かせないツールになったことで、これらを活用した集客活動も必須になってきていると言えます。また、個人での情報発信ツールが多様化したことで、Youtuberやインスタグラマーに代表されるインフルエンサーの影響力も年々大きくなってきており、卒花やプレ花の情報発信力も大きな要素の1つとなりそうです。

66_結婚式場の集客施策の多様化

 

5.ビジネスモデルの変化

結婚式場数は間違いなく減るでしょうし、アイテム提供事業者も減ると思います。

理由は市場が縮小するからであり、現時点でもすでに供給過剰な状態なので、価格競争が起これば単価も落ちるので売上はより厳しい状況になると思います。

結婚式場運営は固定費が大きいビジネスなので、売上減は利益にかなり直接的にダメージを与えます。そうなると、経営の厳しいところから事業者数が減っていく、となるでしょう。

ただ、ビジネスモデルの劇的な変化が一気に起こることはなく、これまで書いてきたようなチャネル変化やスタイルの多様化が進んでいき、ハードによる差別化の難易度がこれまで以上に高くなっていくと思います。

66_ブライダル関連のビジネスモデルと関係性

 

これからの結婚式場運営に必要なマーケティング戦略

さて、これらを踏まえてこれらの市場環境・マーケットの変化の中で結婚式場が生き残るために必要なマーケティング戦略について考えてみます。

結婚式場集客の全体像

66_これからのマーケティング戦略の全体像

「既存の集客モデルの最適化」と「新規集客経路の開拓」を2つを並行して行うことが必要だと思います。

まず、既存の集客モデルとは、ゼクシィやみんなのウェディング、ウエディングパーク、ゼクシィなびなどブライダル特化型媒体を活用して集客をするモデルです。これまでの主流の集客スタイルで、結婚式場集客といえばこれらの媒体に広告を出稿すること、とイメージする方も多いでしょう。

新規集客経路の開拓とはブライダル媒体を使わない集客手法のことで、いわゆる自社集客強化のことです。SEOやウェブ広告、SNS活用などのデジタルマーケティング手法、マス広告や紹介など、考えとしては実に様々な方法がありますが、仮にゼクシィなどのブライダル媒体への広告出稿を停止しても集客を獲得できるようにするための経路を獲得することを指します。

今後の中長期でのマーケティング戦略を正確にとらえていくには、これらの施策のどちらか一方だけの成功では足りず、両方をきちんと立ち上げて進めていくことが重要だと思います。それぞれに対する最適化施策を実行し、それぞれから集客を獲得することを目指す、これが全体像となります。

ブライダル媒体からの集客最適化

ブライダル媒体経由の今後の予測としては間違いなく減少トレンドです。媒体毎の集客数の横移動はあったとしても、トータルで見れば間違いなく減っていくでしょう。

とはいえ、集客の総数で言えばまだまだ大部分を占めており、急激な業界構造の変化が起きにくいというブライダル業界の特徴も考慮すると、「これからは新しい集客の時代だ!」と言うのは早すぎます。

個別の媒体ごとの特徴と施策は本記事では割愛しますが、以下の記事にまとめてありますので詳細はこちらをご覧ください。

ブライダル媒体からの集客攻略方法まとめ【結婚式場の集客担当者向け】

ブライダル媒体からの集客の最適化のための施策や業務は地味で大変ですが、きちんとやり続けることである程度は成果が見込みやすいのも事実なので、きちんとオペレーションを組んで安定的に回せるフローを構築することからまずは始めてみましょう。

自社独自の集客経路の構築

実現可能性については企業ごとのリソース等にもよるので一概には言えませんが、今の時代である程度現実的だと思う手法を挙げます。

1.SEO

施策の詳細は以下の記事に書いてありますのでご覧ください。

理想でいえばメディアを立ち上げるですが、そこまでもいかなくても現状の式場ホームページのSEO対策をしっかりと行うだけでも一定成果を上げられるケースも多いと思います。

2.SNS

ブライダルと相性がよく集客に活用できそうなのはFacebookとInstagramの2つですが、最近ではInstagramがほとんどですね。Facebookアカウントの運用のコツは以下の記事にまとめてあるので、こちらも参考にしてみてください。

結婚式場のFacebook運用のポイントと活用事例

SNSの運用は直接的なコストは掛からないですが、運用のコツを抑えるのと継続して情報を発信し続けるためのマンパワーがかなりかかるので、他社が成果上げてるらしいからとフラッと始めてはみたものの忙しくて放置してそのまま、というケースも多いです。

実施すると決めたらしっかりと継続できるような体制と担当者の気合と根性は必須、あとは成果が出るまで時間がかかるのでその期間のリソース確保の覚悟をもって取り組んでください。

3.自社独自の集客を考えるときに気を付けたいこと

施策実行のタイミングまでに末端の戦術・施策まできちんと落とし込むことは見落としがちですが重要なポイントです。これがないと、

  • せっかく取り組みを始めても初めてのことだらけなので何を知らいいかわからなくて止まる
  • 担当者が誰か責任者が誰か明確になっていなくて止まる

などプロジェクトが簡単に止まります。上流の戦略と現場の戦術はセットじゃないと機能しません。そこまでの範囲をしっかりとスコープとして、一気通貫で整っている戦略となるようにしましょう。

 

確度は低いが攻めるならこんなマーケティング施策もあり

最後に、実現可能性は高くはないですが、成功したら大きいリターンがあるかもなー、というやや飛び道具的な施策も簡単に紹介します。私自身が過去に実施したことがあるというわけではなく、昨今のブライダル業界の状況やマーケティングのトレンドからこんな可能性もあるかな?と思っている施策です。

1.インバウンド需要の取り込み

訪日外国人が増えているので、直線的な関連はないにしろうまく掘り起こせばポテンシャルはあるんじゃないかなあとは思います。

どうやってつなげるのか具体的なイメージは持ってないので思いつきレベルですが、簡単に取り組めそうなところだと集客面で式場ホームページの英語サイトを作る、英語リスティングを国内向けに出稿する、などは比較的簡単にできるので、可能性検証のために余力あるときに実施してみてもいいのではないでしょうか。

ただ、既存の会場で新たな顧客層をターゲットとして企画していく場合、集客経路の設計・構築だけではなく、文化の違いを考慮したオペレーション設計も必須なので、そこのハードルの方が高いかもしれません。

例えばM&Aで新たな会場の運営を始めるときなどは、最初からそれ用に設計できるので、事前準備でデータ収集をかけておきつつ、いざというチャンスに備えておく、というのが現実的な路線でしょうか。

2.過去を含めたの「なし婚層」の掘り起こし

なし婚層向けの商品企画、というのは数年前から言われ続けていますが、明確にブレイクしたサービスはまだあまりないんじゃないかと思います。私も何が具体的なアイディアがあるわけではないですが、事業企画、事業計画を立てるときのターゲット数の見積りは過去分まで含めていいと思っているのが一般的ななし婚層向け商品企画と異なる点です。

なし婚の人が結婚式をするタイミングで何かしらの購入をするサービスであればこのタイミングの試算で間違いはないですが、「結婚式を挙げたなかった人向け」のサービスを企画するのであれば、過去数年分のターゲットを累計する必要があります。

例えば結婚から5年以内の人向けの商品なら20万組×5年=100万組(=200万人)、です。この考えを取り入れるかどうかによって、試算されるマーケットサイズが数倍変わってきて事業判断を誤るので、この点に着目して企画を練ってみると意外と視野が広がるかもしれません。

3.卒花とのコミュニケーションの構築(CRM、LTV向上)

CRM施策の検討をしているまたはしたことのある式場担当者はそれなりの数いると思うのですが、うまく事業化まで進んでいる企業は少ないでしょう。

詳細は今回の記事では割愛しますが、下記の記事などを参考に検討して見はいかがでしょうか?

ブライダル業界でCRMを活用したマーケティング施策の可能性はあるか考察してみた

 

結婚式場のマーケティング戦略についてまとめ

これからの時代はこういった戦略をきっちり定めないともう生きていけない業界になっていきます。

会社の規模やビジョンによってとらえ方は変わりますが、やれることは1つでも多く今から実施していかなければ間に合わないことも多くなっていきます。自社の現状と未来にフィットする情報や施策を取捨選択し、きっちり考えて実行していくことが重要だと思います。

この記事を書いた人

市川 貴之

株式会社アナロジー代表。「ブライダル3.0を実現する」をミッションに掲げ、ブライダル事業者向けマーケ支援、ブライダル特化の人材紹介、Leju(フリープランナープラットフォーム)を運営しています。マーケティング、事業企画が得意。

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